Moon / 月に囚われた男

劇場公開時に気になっていたものの、あらすじを観た限りではよくあるSFのひとつかと思った。


サイレントランニングを思わせるありがちなシチュエーションで、何を描くのか。

Trailer



「映画との対話」

否定的な意見が多いが、私は傑作だと思った。

月の鉱山で一人で働く主人公が、自分は人権無視で使い捨てされるクローンであることに気付くという映画だ。

いわゆる未来の管理社会の中で、虐げられた個人を描いている。ここまではよくある話だと思う。


徹底的に傷つけられた主人公はなにを思うのか?

たいていのディストピア的な映画であれば、自殺でその苦悩が昇華されるとか、被害者のメンタル内での解決を求めた。

サイレントランニングでは、自殺を選ぶ。


この映画は違う。

もうひとりのクローンが地球に戻り、会社を人権侵害で訴える。株価は暴落、メディアではバッシングと、大変なことをする。

こんなふうに、きっちりと反撃を行うところが素晴らしい。泣き寝入りではないところが素晴らしいと思った。

しかし人によってはこのラストが不快らしい。
物語の構成としてラストは静かに余韻が欲しかったとか、クローンにはささやかながら幸せな生活をひっそりと送ってほしい、とか。


私はこのラストがあってこその映画だと思う。今の時代では、闘うんだなぁと思った。


「おまけ」

イギリス映画は弱者視点の映画に良作が多いと思う。階級社会が背景なんだろうけど、国としてはともかく文化は本当に素晴らしい。


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